ごめんね、留美ちゃん

あたしの、この乾いたクチビルで貴女の艶やかなクチビルに、口付けていいのかしら
だめ、だめだわ
あたしは独りで生きていくの
いままでだってそうだったじゃない
すき。と告げた女の子はみんな逃げたじゃない
わかる、わかるわよもちろん
好意なんて恐ろしいもの
同性からだったら尚更だわ
あたしたちは求めあっているけれど
あたしには過去があって
あたしには過去は消せない
ごめんね、留美ちゃん

選択する


声がきこえる。
来週の月曜日が僕の誕生日。
「……。女か音か、どちらか選べ。本来ならば君は18の歳で死ぬ運命だったのだ。サァ選べ…。」
彼女か音か、どちらかを失うのだ。何て残酷なんだろう。


僕には音楽が在った。
独りで生きていくつもりだった。
音楽が在った。
ただ、それしか無かった。いつ死んでも構わなかった。

既に死んでいたから。


そこに彼女が現れた。
彼女は瞬く間に僕の心を抉っていって、とても重要な位置を占めるようになった。
切なさを知った。
もし大切な人が出来た時、その人は音楽と同等か、或いはそれ以上の地位を築くであろうことを勿論、予知はしていた。
どちらを選ぶのか、それも勿論決まっている。


声がきこえる。
僕は18の誕生日、音を失う。
最期にたくさん彼女の声をきいておこう。
もし彼女の心が僕から離れたら、その時は死のう。
…………。
…生きよう、その時まで。