ゆびを口元に添える癖がある。
安心する、というよりも、その形がもっともニュートラルな自分だと感じる、の方が正しい。
病院で医者と話すときは、背中を丸めて、左手で口元に触れる、或いは左手の親指で向かい合う指に触れながら、医者の向こう側の景色、もしくは自分と医者との間にある机の側面をみて、話す。こうしないと考えが纏まらない。
自分と話すかのような感覚なの。俯かない。顎を高くあげて、角度をつけて目を固定する。
これはおそらく他人を必死に見下す姿勢に違いない。なのに縮こまって、話す姿勢すら矛盾している。