pr-ostitution÷time limit

自暴自棄になった。
得体の知れない、下らない男に体を売って、愛する男の手を自ら解いて。
あとで後悔してシットリ、泣いてもフラフラ、喚いても、
あたしにはあの人の体に触れる権利はもう無いのだわ。
こんな体なんか、もう要らない。捨ててしまいたい。
売れる、確かに売れるわ、この体は。
価値がある。みなが美しい、という。
だけれど、あの人が触れてくれないこの体に、あたしはなんの価値も見いだせないの。
あの人は優しい。こんなあたしにまた、手を伸ばしてくれている。
でもだめ、だめなの。あたしはもうあなたと手を繋げる人間では無いのです。
だめよ、他の女にこの体はあげない。最後まであたしのものよ。あたしが最後を見届ける。
エレベーター独特の浮遊感に身を委ねながら、
新月の夜に、あたしは覚悟する。
この体は飛び散る事になる。
31階に着いた。・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・ごめんなさい、あたし、ほんとうは老いて醜くなるまであなたのもので居たかった。
死にたくない、死にたくない、死にたくない。怖い。飛び降りる、どんな感じなの?
嫌、死にたくない。死にたくない。
最後まで自暴自棄に、悲しみながら死にたかった。躊躇なんかしたくなかった。
自暴自棄は長続きしない。垣間見える死、手が届かないのは常の事。
ポケットの携帯電話が鳴る。あの人からだわ。
迷っているうちに、携帯電話は静まり返ってしまった。
あの人に電話をかけたい、かけたい。おはなししたい。声が聞きたい。死にたくない。止めてほしい。
ここまで来てほしい。一緒に死んでほしい。あの人には生きてほしい。あたしを忘れてほしい。あの人を忘れたい。死にたい。死にたくない。
プルルルルルッルル
「もしもし」
あの人の声・・・・。ああ、あたし、満たされて行く。
「いまから死のうと思うの。あなたの住んでいるマンションの屋上に居るわ。これがせめてもの償いよ。」
「償い?死ぬ事は償いにならないよ。」
「・・・・・。」
「・・・・。」
「・・あたしね、あなたの隣に居る資格は無いと思って、いまのいままで死ぬつもりだったの。でも、やっぱりあなたがすき。死にたくない。もう一度、御願い。」
「僕はいつでも君を待っているよ。いまから屋上に向かうから。動かないで待ってて。」
「うん。」


生きよう。犯してしまった過ちはもう二度と消えないけれど、