ベッドで抱き合う

ベッドで抱き合う。二人で。
彼が上で私が下。
お互いの耳元にお互いの口元が触れていて、リアルな声がきこえる。彼の重みを感じる。
私たちは仕事を終えて毎日、囁き合う。
「このまま一本の刃物に貫かれて、一緒に苦しみながら死ねたら素敵なのにね。」って。
そのまま幽体離脱して二人で手を繋いで、シーツに染み込んで行く二人の血を視ていたい。
ウットリするんだろうな。素敵なんだろうな。それでお仕舞いなんだろうな。
それでいいのかな。
二人、ピタリとくっついて、朝を迎える。
現実が戻ってくる。二人の世界は又、崩れてゆく。
私たちには解らない。この毎日が正しいのか、私たちの抱く願望が、それでいいのか。どうか。
・・・。別れよう。私たち、たぶんそれが一番の道。
二人だけの世界、確かにあまいけれど、私たちにはそれしか無い。
一緒に生きてゆくには拙過ぎる、あまりにも。
一緒に生きてゆくには弱過ぎる、あまりにも。
今日仕事を終えたら、彼の耳元で囁こう。「別れよう。」って。
私たちの最後の、あまいこと。
次の朝から私だけの日常が、ハジマル。