鬱病の症状に、気分が優れない、等をあげる人間は残念ながら素人と言わざるをえない。鬱病において最も顕著に指摘されるべきは、他人から愛される力の欠如、である。これはすなわち他人を愛する力の欠如、と換言する事が可能なのであるが、他人を愛し、思いやり、守ってやり、支える。そういった事が困難になるのである。彼らからは人が離れていくのである。手を最も差し伸べられてしかるべき、愛すべき彼、彼女から人の手が離れていくのである。そしてその事を最も知る鬱病患者には、鬱病患者を救う力が残されていない。人を愛する事が出来る人間は強い。弱い。その強さ、弱さを彼らが携える事が出来る事、これがすなわち鬱病からの回復を示すに違いない。そして、悲しみを知った彼らが普通以上の素敵な人間になっていくのである。